WSOP2014ファイナルテーブル ハンド考察
World Series of Poker(WSOP)2014は先週ファイナルテーブルを終えました。
結果などはポーカーニュースサイトなどでご覧になれますが、ここではWSOP2014ファイナルテーブルの気になるハンドを砕いて考察していきたいと思います。
最初のレベルで早速面白いハンドがありました !
ハンド① 98o vs KTo (ページの下にビデオが見えます)
Larrabe 98o vs Van Hoof KTo, WSOP 2014 Final Table
Turnカードとアクションの進め方で両者のポーカーのスキル差が如実に伺えたハンドになりました。
Larrabeからの相手のハンドレンジはJhTc9dという固まったボタンからのレイズでもなにかしらのドロー/メイドハンドが考えられる非常に対処の難しいシチュエーションです。
そして彼自身のハンドはペアはあるもののボードで一番小さいペア。ドローが付いているもののナッツにはなれないドロー。
フロップの動きとしてはcheck/callがやはりベスト。
TurnにKh
KQなら状況は変わらずオープンエンドならストレートが完成です。
ここで注目すべきはcheckすると何が想定されるか?とdonk betするとどうなるか?です。
checkするとポジションがあるとは言ってもBBのプリフロップのフラットとcheck/callを考えるとFlopもTurnのKというカードもブラフはしづらい。
ブラフレンジもストレート以外のショーダウンバリューがありそうなハンド(トップペア~セット)もベットする意味がないのでチェックするはずです。
ストレート以外のハンドにはcheckされてしまうと考えれば高確率でポットコントロールされてしまいますね。そしてショーダウンバリューがあるレンジをリバーで降ろすのは難しいと考えたと推測されます。
では、donk betするとどうなるか?
LarrebeのハンドレンジはVanから見るとだいぶボードに絡んでいそうです。最悪ナッツストレートをFlopでスロープレイしていてもおかしくないシチュエーションです。
donk betすることでだいぶハンドは絞られる形になりますが、Vanが降りなくてはいけないハンドが多数あることです。
ここではどのワンペアでも相手のハンドレンジを考えるとショーダウンバリューはなさそうに見えます。
そしてブラフもだいぶリスクのある動きになってしまいます。
Vanのボタンレイズのハンドレンジを考えるとボードに毎回絡んでいるとは言い切れません。
どちらかといえばLarrabeのハンドレンジの方が3betをしなかった分ボードと絡んでいるように見えます。
こういった理由から負けているワンペアタイプのハンドは降ろすことが出来てブラフまたはフリーカードを防ぐ利点がありました。
ただ、彼のdonk betには一つ大きなミスがありました。それは彼の”ベット額”にあります。
近年のポーカーで一番と言っていいほどの差が出る大事なものです。
彼は5.45mil(13.5bb)に対して3.35mil(8.5bb)というベット額を選びました。
一見すると60%ほどの良いベットのように見えます。
しかし、アベレージスタックやレプリゼントレンジを考えると明らかに大き過ぎます。
ここではツーペアまたはQx,KQoに成りきりたいので5bb程度のベットのほうが強そうに見えます。
ベット額からVanの頭の中ではKTがほとんどの場合ベストハンドであると確信が持てたベット額になってしまったと推測します。
そしてもう一つ。
忘れてはいけないのがプリフロップからのハンドレンジです。
ワイドなレンジの可能性が高いボタンからのレイズに対してBBからフラットしているということはAQというハンドは考えにくい省かれてしまうレンジの一つに入ってしまっていたことです。
VanがTurnで考えていたのは、
①ベット額からベストハンドの可能性高。
②相手のAQが省けることからリバーはブラフに切り替わることも想定していた。
③ポットの大きさもちょうど良かったと考えられる。5,6mil打たれてもオールイン出来るルームがありましたし、チェックされればオーバーベットオールイン出来る大きさ。
そしてファイナルテーブルは始まったばかり、まだ9人でプレイしています。
Larrabeは降りてしまえば暫定6位。コールして負けてしまえばトーナメント自体敗退で9位になってしまうとてもプレッシャーのかかる場面。
最後に一つ。
LarrabeはVanの実力を見極められなかったことが、ベストハンドを降りてしまった最大のミスだと思いました。
彼のプレイの幅が分かっていればTurnのdonk betから勝つことが出来なくなってしまったことに気づいていたでしょう。
これでWSOP2014ファイナルテーブルのこのハンドの私の考察とします。
専門用語やハンドレンジについて詳しく書いていませんので分かりにくいと感じる方多いと思います。
”Comment”から質問等受け付けます!何でも聞いてください。
まだWSOP2014ファイナルテーブルの視聴も途中なので面白いハンドが出てきたらまた考察していきたいと思います
はじめまして。今年の9月頃から真剣にHold’emをやり始めた大学3回生です。
こういう解説を心から待っていました(もちろん一度読んでも分かるわけはなく、動画を細かく止めながら解説を読むのを繰り返してやっと6〜7割理解出来たかなというところですが)。
僕は主にPokerstrategyを読んで戦術を学んでいるまだまだビビるぐらいの初心者のですが、このような解説には本当に感動を覚えます。Hold’emの奥深さと魅力に脳を揺さぶられる気分です。
僕がお伺いしたいのは、Donk betの解説の部分なのですが、 “13.5bbのPotに対して、8.5bbのDonk betをするよりも5bb程度のbetの方が強さを主張しやすい” とおっしゃられていますがこれは
①BTNから見た、BBがメイドハンドである可能性>BBから見た、BTNがメイドハンドである可能性 である
②BBはメイドハンドを主張したい
③BBはバリューBetをすべきである
④しかしBBの8.5bbはバリューBetではなく、フォールドエクイティを取りにいったように見える
ゆえに彼のDonk betが結果的に敗因であった
という理解で正しいでしょうか??
となれば、僕はこのレベルまで考える相手とは戦える気がしません。しかしいつかはそうなりたいなとも思います。
今僕はNL2で勉強がてら経験を積んでいるのですが、自分が最終的に目指すのがこのレベルだったとして、このレベルになるためにNL2で今すぐできることはなんでしょうか。
僕は、相手の思考レベルを推し量ることかなと思っています。しかし一方で、メイドハンドを主張する、バリューBetを主張するなどのメタメッセージは「相手がそこまで感じてくれるか(考えてくれるか)」に大きく依存すると思うのです。
だからもしかすると、NL2からレートを上げる ということも必要かもしれません。
Ichinoseさんはどう思いますか?(こんな機会はめったにないと思うので!)ご意見を聞かせてくれれば幸いです
。
ご質問ありがとうございます。
早速返答させていただきます。
Donk betで主張できるレンジ/したいレンジというのがQxまたはKQでしかないという点です。
Flopでのブロードウェイカードの目立つボードにcheck/callすることでボードと絡んだフロートではないレンジが誰の目にもうつる動きですね。
ワンカードストレート以外凄く偏ったボードでトップペア~セットまでのメイドハンドで相手(BTN)のエアーレンジを含めたレンジに対してのショーダウンバリューは十分と考えられるでしょう。
またハイカードが集まっていることからもscared cardsはボトムツーペア以外の数少ないレンジにのみ数少なく存在するのみ。
ここでのDonk betはバリューを逃したくないという意味合いでしか効果を出さないということです。
それなら8.5bbと5bbの強弱に説明は付くかと思います。
敗因は相手のレベルが高過ぎたことですね。思考レベルがずっと低い相手にはDonk betが一番効果を発揮していたとも考えられます。
TurnでのベットはVanにバリューとブラフチャンスを逆に献上したにすぎません。
ポジション・ハンドレンジ・ICM・Vanのスキルレベルを考えればこのポットはTurnでどうにか出来ることではないと気づけたはずですね。
Donk betを選んだことでRiverでbluffできたかもしれない唯一のチャンスを自分から投げ出してしまったということです。
ただ結果論であって私の考えるベストな動きとしては、Turnでcheck/foldもしTurnでcheck/checkだった場合、Riverは自分より強いワンペアレンジを降ろすための5bb程度のバリューベットブラフです。
この大会は世界的にも一つの高額参加費が伴うイベントです。
その上ファイナルテーブルとなればベーシックなスキルは勿論のこと考えるレベルがどうあれメタゲームが要求されることは必然ですね。
上手な人から順に勝ち負けが付くゲームではないので今年のファイナルテーブルに出場者にもはっきりとした実力差が個々で見られました。
ここで最も大切なことは自分・相手の実力とどれだけのプレッシャーが掛かっているか(fear)を理解することだと私は考えます。
心理戦というのはプレッシャーがかかった場面でしか生まれません。ポーカーでは名声だったり金銭がかかったときでしょうか。
心理戦を楽しみたいと言うことであれば、レートが高ければ高いほど感じられるでしょう。
上手くなりたいというのであればハンド数をこなし情報を整理しゲームを理解することですね。
PTJPには上達するのにすべてのコンテンツが揃っています。投資した時間もお金も無駄にはならないと信じています。
共に上達して行きましょう。
vanHoofはリバーブラフに変えていると思うのですが、ラグだった場合にはチェックで回すことも考えてのターンコールでしょうか。
この場合リバー7は8xがターンブラフした可能性を考えてリバーオールインしていると思うのですが。
また実際にLarrabeのターンベットは大きかったと思いますが、自分ならリバーで続けて非常に小さなベットをするかもしれませんがどう思いますか?
RiverはTurnまでのコミュニティーボードとアクションから見ればラグの一つです。レイズする意味が全くないのでコールだったでしょう。また長考していたのはRiverでブラフに切り替われるというプロセスだったように見えます。
そしてVanは決して8xだけを降ろしにブラフしたのではなく、バリューを取ることが出来るハンドとベット額がないことから、負けているハンドレンジを降ろすことを最優先に考え、コール出来るハンドがLarrabeにはないことで負けているすべてのハンドを降ろしてしまえると踏んだ結果ですね。
RiverのCBは私もTurnを打ったことで必要だと思います。もちろんストレートがヒットしていなかったらcheck/foldを選んでいますが、
Turnでコールしていたかもしれないストレートでないレンジからバリューが取れるかもしれないですからね。
ポーカーページで勉強させてもらっておりますが、
ベット額はとくにトーナメントで大事ですよね。リングゲームとはまた考え方が異なると思いますが、トーナメントにおけるベット額の適切な考え方はあるのでしょうか。今回60%はミスベットではあったとすると、ポットの半分よりも低い額をうつのが主流なのか、そこについて質問させてください。
もちろん序盤と終盤での考え方は異なるかもしれませんが、宜しくお願いします
トーナメントとキャッシュゲームでベットの大きさを変えるというのではなく、シチュエーション(スタックサイズ・ポジション・賞金差・相手のプレイスタイル/レベル・トーナメントストラクチャーなど)毎にベット額を調整することでより利益の上がるプレイの幅が出来るのです。ここでは全体のスタックサイズまたICMを元にしたいわゆるバブルファクターが非常に高いシチュエーション故にというのが一つの理由です。上記でも説明していますが、Larrabeのレプリゼント出来る唯一のレンジはストレートであって、そのハンドをレプリゼントしたときのベット額というのは大きくある必要がないのです。
質問の直接的な答えにはなっていませんが、主流という考え方は取り払い、シチュエーション毎にベット額・アクション(check/bet(raise)/fold)を調整することが必要で大事なことなのです。